市場の総括
週末(5月10・11日)の米中通商協議で追加関税の一時引き下げが合意され、世界的な景気後退懸念が後退しました。これを受けてリスク資産に資金が戻り、株式市場は大幅上昇、安全資産の円や金は急落しました。その後、米4月CPIの予想下振れで米利下げ観測が維持され、13日(火)にはドル高が一服、株式も業種間で循環物色が進みました。本日14日(水)は、こうした楽観ムードが継続するか注目されます。
ファンダメンタルズ
米国株式市場の動向
通商合意への期待と株価急騰 – 週明け12日(月)の米株市場は米中両国が関税引き下げで合意した報道を好感し、主要指数が揃って急騰しました。ダウ平均は終値で前週末比1,160ドル高と大幅上昇し、S&P500も10営業日続いた上昇が一時ストップしていた流れを断ち切って上昇に転じました(約2.8%の上昇)。ナスダック総合もハイテク株主導で上昇し、この日は主要3指数とも4月9日以来の大幅上昇率を記録しました。米中の相互関税115%分の引き下げ合意(90日間の追加関税停止と協議メカニズム構築)により、世界経済への悪影響懸念が和らいだことが背景です。投資家心理の不安指数であるVIXは、このリスク選好の高まりにより3月下旬以来初めて20を下回り、4月に記録した一時60という水準から急低下しました。
インフレ指標と金融政策観測 – 翌13日(火)は、米4月消費者物価指数(CPI)が前年比+2.3%(予想下回り)と発表され、市場予想よりインフレ鎮静化が進んだとの解釈から利下げ観測が継続しました。これにより前日の株価急騰で高まっていた利上げ懸念が後退し、長期金利が低下、株式市場には追い風となりました。S&P500指数は前日比+0.16%と小幅続伸し、終値は年初来高値(1月23日終値)に僅かに届かない水準まで上昇。ダウ平均も+0.86%(約359ドル高)と5営業日続伸し、史上最高値に迫る水準です。一方、ハイテク株中心のナスダック総合は-0.38%と4日続落しました。これは前日の長期金利急騰の影響や、半導体・IT株に利益確定売りが出たためで、テスラやエヌビディアなど一部成長株が上昇する一方、マイクロソフトやアマゾンが軟調で高安まちまちとなったためです。
セクター動向 – 月曜は景気敏感株からディフェンシブ株まで幅広く買われ、特に通商摩擦の影響を受けやすい工業株や資本財セクターが大きく上昇しました。また、「関税引き下げ=コスト減少」の恩恵期待から消費関連や自動車株も買われています(例:ダウ構成のキャタピラーやボーイングが上昇)。火曜は長期金利が前日の急騰後に4.4%台から低下したことで、景気敏感な金融株や資本財株に加え、不動産や公益など金利低下メリットを受けるセクターにも買い戻しが入りました。半面、直近上昇の大きかったハイテク主力株には一部利食い売りが出て、ナスダック系の一角が軟調でした。それでもアップルやエヌビディアなど一部の大型ハイテクは買われており、市場全体としては循環物色の様相です。投資家の視線は今後のFRB政策にも注がれており、CME FedWatchによれば9月FOMCでの25bp利下げ確率は高い(約70%)ままです。これは米中関税引き下げが景気下支え要因となり、FRBが年後半にも金融緩和に踏み切れるとの観測を支えているためです。もっとも利下げ織り込みの行き過ぎに対する指摘もあり、インフレに再加速の兆しが出れば金融政策の不透明感が戻りうる点には注意が必要です。
日本株式市場の動向
急騰・38,000円台回復 – 東京株式市場も米中摩擦緩和の追い風を受けて連日の上昇となりました。特に13日(火)は日経平均が前日比+539円高(+1.43%)の38,138円で取引を終え、節目の38,000円台を約3ヶ月ぶりに回復しました。日経平均はこれで4営業日続伸となり、寄り付き直後には一時800円超高まで急伸する場面もありました。背景には前日の米国株大幅高があり、米中関税合意の好材料を織り込んで朝方から海外投資家の買いが先行しました。特に輸出関連の大型株(自動車・機械など)は、関税負担減と円安進行による業績押上げ期待から大きく買われました。実際、ドル円相場が147~148円台と年初来の円安水準にあることも投資家心理を支援し、株高に弾みを付けました。
業種セクターの明暗 – 外需株を中心に幅広い業種が上昇しました。海運株や銀行株、精密機器など景気敏感セクターが引き続き堅調で、医薬品など守りの業種にも買いが波及しました。一方で、内需の一部には利益確定売りも見られ、水産・農林や建設、石油石炭製品などは軟調推移となっています。これは日銀の金融政策正常化観測(後述)から金利上昇を警戒する向きが不動産・建設株を売る動きにつながった面があります。また個別では、前日まで上昇を牽引したハイテク株に一服感があり、例えばファーストリテイリング(ユニクロ)は2%超の上昇でしたが、シャープは決算失望から12%超の急落となるなど銘柄間で明暗が分かれました。企業の2025年3月期通期決算発表がほぼ出揃い、好業績銘柄への見直し買いが入りやすい半面、業績不振銘柄への失望売りが集中するなど、個別物色の傾向も強まっています。
日銀政策と円相場の影響 – 日本市場に特有の要因として、日銀の金融政策転換観測が株式に与える影響があります。植田和男日銀総裁は先週、日銀のマネタリーベースや当座預金残高が「現状やや大き過ぎる」と国会で述べ、長期的にバランスシート縮小を検討していく姿勢を示しました。また「実質賃金や消費は今後もう少し良い姿が見込まれる」とも発言しており、市場は将来的な利上げ観測を意識しています。実際13日には国内債券が売られ長期金利が1.5%近辺に上昇、円相場も一時147円台前半まで円高方向に振れました。このため金利上昇に弱いセクター(不動産・建設など)が売られやすくなり、株価上昇の重しとなりました。もっとも、円高と言っても147円前後と依然歴史的な円安水準であるため、日本企業の輸出採算には余裕があり、同時に為替ヘッジ費用の低減にもつながっています。その結果、「適度な円安+将来的な金融正常化」という中長期にバランスの取れた環境との見方もあり、極端な円高でもないため日本株全体への悪影響は限定的との声も市場にはあります。足元では海外投資マネーが日本株に向かう動き(企業統治改善や低PBR是正策も追い風)も指摘され、TOPIXも8日(月)に一時8カ月ぶり高値を付けるなど堅調です。日経平均は1989年の史上最高値(38,915円)にあと数百円と迫っており、利益確定の売り圧力も出やすい水準ですが、抜群の業績を背景に買い意欲も強く、高値圏での攻防が続いています。
為替市場の動向
ドル円(USD/JPY) – 週明けにドル急騰・円急落しました。米中関税合意を受けたリスク選好の高まりで安全資産の円が大きく売られ、ドル円相場は12日(月)に一時1ドル=148.64円と4月初旬以来の高値まで急伸しました。前週末比では+2.19%のドル高/円安という異例の跳ね上がりで、背景には米長期金利の急上昇(10年債利回り4.46%、+0.086bps)によるドル買いもあります。さらに、これまで円買いに偏っていた投機筋ポジションの巻き戻し(後述)が円売り圧力を増幅した面もあります。13日(火)になると、米CPI鈍化で米利回りが低下したためドル買いが一服し、ドル円は147円台後半へ反落しました(終値147.60円前後、前日比-0.57%)。しかし下押し局面でも147円前半で下値が堅く、安全資産への資金回帰は限定的でした。ドル円は依然として年初来高値圏にあり、米景気の底堅さや日米金利差が意識される限り上昇基調を維持しやすい状況です。もっとも、148-150円台は過去にも当局警戒感が高まった水準であり、日銀金融政策観測など円買い材料には引き続き注意が必要です。現在のレート水準には、昨年秋のドル円急騰・急落局面で積み上がったポジションの痕跡もあり、市場にはオプションOP価格や大口輸出の売り予約が点在するため、150円手前では上値が重くなる可能性があります。
ユーロドル(EUR/USD) – ドル高の巻き戻しと欧米金利差が焦点です。米中摩擦緩和の好材料は本来ユーロ圏経済にも追い風ですが、週明けは対ドルでユーロ安が進行しました。12日(月)のユーロドルは1ユーロ=1.1074ドルまで急落(-1.54%)し、1日の下落幅としては昨年1月以来の大きさでした。これはドル全面高によるもので、利回り上昇に伴うドル買いと、過度な景気後退観測後退でユーロの安全通貨的買いが剥落した形です。加えて、4月末時点でユーロは対ドルで約7.6万枚の投機筋ネットロング(買い越し)と買いポジションに偏りがあったため、ドル急伸時にロング解消売りが出やすかったこともユーロ下落を助長しました。13日(火)には状況が反転します。米CPI低下を受けECBの緩和観測が後退(相対的に米の利下げ期待が先行)したことでドルが売り戻され、ユーロドルは1.1177ドル(+0.81%)まで上昇しました。ユーロ圏でも独仏を中心に株式市場が史上最高値を更新するなど景況感は明るく、欧州通貨の底堅さが意識されています。また、ウクライナ情勢についてロシアとウクライナの停戦合意観測という報道もあり、リスク要因の後退はユーロ買い材料となりました。足元のユーロドルは1.12ドル近辺と年初来高値圏にあり、直近レンジ上限(1.12台前半)を明確にブレイクできるか注目です。上抜けすれば昨年3月以来の高値トライとなり、次のターゲットは1.15ドル台も視野に入ります。しかし、ユーロ圏のインフレ率はなお高水準でECB追加利上げ余地も残るため、むしろユーロの独歩高には注意が必要です。欧米金融政策スタンスや景気指標によって振れやすく、当面は1.10~1.12ドル台での揉み合いも想定されます。
ポンドドル(GBP/USD) – 堅調な英国経済とクロス円動向がポイントです。ポンドも対ドルではドル高に押される局面がありましたが、その調整は限定的でした。12日(月)のポンドドルは一時1.30ドル台後半まで下落するも、終盤に買い戻され1.32ドル台を維持しました(対前週末比では小幅なポンド安)。13日(火)は米ドル安の流れに乗って1ポンド=1.3297ドル(+0.95%)まで急伸し、年初来高値を更新しています。英国では足元で失業率の低下や賃金上昇が続き、5月上旬の英中銀(BOE)会合でも0.25%の利上げが決定されたばかりです(政策金利4.75%)。インフレ率も依然高く、市場は「年内利下げなし」との見方が有力であることがポンドの下支え要因です。また、欧州全体のリスクセンチメント改善に伴いユーロ高・ポンド高の相関も見られました。もっとも対円では、リスク選好局面で円安が進みポンド円が週明けに急騰したため、その反動調整で若干ポンド売り・円買いが入りやすい状況もありました。総じてポンドドルは堅調推移が見込まれますが、1.33-1.34ドル帯には過去に上値を抑えられた価格帯があり、ブレイクには相応の材料が必要でしょう。5月15日発表の英国GDP速報値や今月下旬のCPI統計などが一段のポンド材料となり得ます。
カナダドル円(CAD/JPY) – 原油高とリスク選好で急伸しました。カナダドルは典型的なコモディティ通貨であり、週明けはWTI原油先物が3営業日続伸して1バレル=80ドル台半ばへ上昇する中、対円で大きく買われました。安全通貨の円が売られたこともあり、CAD/JPY相場は12日(月)に一時112円台後半へ急騰(年初来高値更新)しています。これは主要通貨中でも対円での上昇率が大きく、資源高メリットとリスクオンの二つの追い風を受けた形です。13日(火)は米ドル安を背景にカナダドルも対米ドルで買われ(USD/CADは1.34→1.33台に加速)、その結果CAD/JPYは113円台に乗せてさらに上昇しました。もっとも、カナダ中銀は既に利上げ停止を示唆しており、金融政策面のサポートは限定的です。今後は原油価格や世界景気見通しにCAD/JPYも左右されやすく、ボラティリティの高さに留意が必要です。短期的には112円付近がサポート、114円台半ば~後半に過去のレジスタンスが控えるため、このレンジ内での値動きを見極める展開となりそうです。
金(ゴールド) – 乱高下する安全資産となりました。金相場は先週まで米中摩擦激化を背景に史上最高値圏(1トロイオンス=3,300ドル超)まで買われていました。しかし週明けはリスクオンに伴う利益確定売りが殺到し、6月限先物は前週末比116ドル安(-3.47%)の3,228.00ドルに急落しました。これは5年ぶりの大幅下落となり、避難需要の急減を象徴しています。その後13日(火)は米インフレ鈍化や貿易政策の不確実性が意識され、安全資産としての金需要が3日ぶりに若干戻る展開となりました。終値ベースで約+0.5%の反発となり、一服感が出ています。ただ、依然として金価格は月初比では低い水準にあり、ボラティリティ拡大が顕著です。米金融政策見通し次第では実質金利の変動を通じて金価格が上下しやすく、特に米利下げ観測が強まれば金利低下=金上昇の余地があります。一方でリスクオン相場が続けば資金が金から株式等へ移りやすく、上値は抑制されるでしょう。現在のところVIX指数低下と連動して金は調整局面に入っていますが、米債務上限問題など新たな不安材料が浮上すれば再度安全買いが入る可能性も孕んでいます。
その他通貨 – リスク選好の明暗が分かれました。豪ドル(AUD)は中国景気刺激期待もあり対円・対ドルとも堅調、豪ドル円は週明けに年初来高値を更新しました。NZドルもそれに追随しています。スイスフラン(CHF)は典型的な安全通貨として円とともに売られ、対ドルで0.84フラン台へ下落しました。新興国通貨では、人民元がオフショア市場で一時6カ月ぶり高値(対ドル安値)となる1ドル=7.1779元まで元安が進む場面がありました。これは米中金利差拡大と貿易協議進展によるドル買い・元売りの流れによるものです。ただし中国当局の為替安定化姿勢もあり、その後は7.19元前後に落ち着いています。他方、高金利通貨のトルコリラや南アフリカランドは対円でしっかりで、投資家のキャリートレード意欲が続いている状況です。暗号資産ではビットコインが一時10万4千ドル超まで上昇するなど、極めて強いリスク選好の流れがかいま見えました(※もっとも暗号資産は週後半にボラタイルな動きとなる傾向もあり要注意)。
テクニカル分析(ドル円、ユーロドル、日経平均)
短期(4時間足、1時間足)
- ドル円(USD/JPY): 1時間足では急騰後の持ち合い局面です。週明けの大陽線でボリンジャーバンドがエクスパンションし、一時バンド上限を突き抜けました。その後は147円台後半で推移し、ストキャスティクスは80以上の高水準からデッドクロス気味に下向きへ転じています(短期的な過熱修正を示唆)。MACDもヒストグラムが縮小し始め、買い勢いのピークアウトを示しています。4時間足でも価格は5本移動平均線から乖離しており、オシレーター系に弱気ダイバージェンスが出る兆しがあります。ただし、依然として一目均衡表の雲上を維持し基調は強気です。147.00前後に短期的なサポートが形成されつつあり、この水準を下回らなければ押し目買い優勢の短期トレンドが続くでしょう。一方、148.50付近には直近高値としてレジスタンスが存在し、短期的な上値目標・利食い水準となっています。
- ユーロドル(EUR/USD): 1時間足では週明け急落後にV字回復し、現在は1.115前後でレンジ推移しています。ストキャスティクスは一旦20近辺まで沈んでから急反発し、現在は50~60付近で推移(中立圏)しており、買いシグナルはやや鈍化しています。MACDは1時間足でシグナルラインを上抜けたものの、プラス圏で横ばいとなり勢いが減退しつつあります。4時間足では均衡状態ですが、価格は短期移動平均線(5期間)と中期線(20期間)がゴールデンクロスしており、短期上昇モメンタムは保たれています。直近高値1.118付近がレジスタンスで、ここを明確に越えれば短期トレンド再開とみて買いが加速する可能性があります。一方、1.110付近に直近押し安値があり、ここを割れると短期的に下向きへ傾きやすく注意が必要です。
- 日経平均(日経225): 1時間足では上昇一服の動きです。週明けに一気に38,000円台後半まで駆け上がった後、現在は38,200円近辺で高止まりしています。ストキャスは%Kが80付近から下向きに折れ曲がり、短期的な売りシグナルを発し始めました(過熱感の調整)。MACDもシグナル線との乖離が縮小し、陽転幅が減っています。4時間足チャートでは、価格が5本平均線にタッチしており、これまで続いた上方乖離が解消されつつあります。短期的なエリオット波動で言えば上昇第5波の終了点に近い可能性があり、高値圏でのもみ合いが見られます。サポートは37,800円付近(前日高値ブレイクした水準)が意識され、レジスタンスは直近高値の38,300円台後半となります。短期指標ではRSIも70超から下向きに転じており、目先は調整含みで推移する可能性がありますが、基調そのものは上向きが維持されています。
中期(日足)
- ドル円(USD/JPY): 日足では上昇トレンドチャネル内で推移しています。20日移動平均線(約142円付近)は右肩上がりで、実勢レートとの乖離率も大きくなっています。これは強い上昇モメンタムを示す反面、やや過熱気味とも言えます。ストキャスティクス(スロー)は%Kと%Dが80~90台で横ばいとなり張り付き状態(買われすぎ圏)です。MACDもシグナルとの正の差を拡大しており、トレンドの強さを裏付けています。一方、DMAを3日シフトさせた短期線と5日シフトの中期線を比較すると、短期DMAが中期DMAを上抜いており、これは強気相場の典型です。ただ、過去を振り返るとストキャスが90以上に張り付いた後は調整が入る傾向もあり、今回も148-150円で一時的に上げ渋る可能性は否定できません。サポートは直近押し安値の144円台半ば(20日線近辺)、レジスタンスは心理的節目の150.00円です。ボリンジャーバンドは+2σを上抜けて推移しており、バンドウォークが続くかどうかが注目されます。
- ユーロドル(EUR/USD): 日足では三角保ち合い上放れの可能性が出ています。年初来、1.05~1.11ドルのレンジ相場が続いていましたが、直近高値圏で推移しレンジ上抜けを試す展開です。50日移動平均線(1.09付近)は緩やかな上昇に転じ、200日線(1.07付近)とのゴールデンクロスも目前です。MACDはゼロライン上でゴールデンクロスし、上昇トレンド発生を示唆しています。ストキャスティクスは70~80付近で推移、若干の買われ過ぎシグナルながらトレンドフォロー局面では大きな売りサインではありません。中期DMAでも、短期(3日オフセット)平均が長期(25日オフセット)平均を上回っており、中期的な上昇基調にあります。チャート形状からは逆三尊にも見える底堅さで、首線の1.12ドルを明確に越えればチャート上の計算値は1.17ドル近辺まで視野に入ります。ただ、ユーロ圏独自の材料(例:独景況感指数や南欧債務問題など)が浮上すると上昇にブレーキがかかるリスクもあります。下値めどは1.10ドル(心理的節目かつ50日線付近)、上値ターゲットは直近高値1.1185ドルと1.1270ドル(昨年高値圏)です。
- 日経平均(日経225): 日足では上昇トレンド継続ながら一部指標に警戒シグナルが出始めています。価格は5日移動平均線を上回り連日陽線が続いており、パラボリックSARも買い転換シグナルを継続中です。MACDは3月末にゼロラインを上抜けて以降一貫して上昇基調、現在もヒストグラム拡大が見られます。ストキャスティクスは80以上の買われ過ぎゾーンにありますが、高値圏での張り付き状態で強気トレンドが継続する際によく見られる挙動です。一方、騰落レシオ(25日)は130%台に乗せ過熱気味、RSIも75前後と高めであり、中期的にもテクニカルな過熱感は否めません。DMA(3/3)とDMA(25/5)でみると、短期線が長期線を大きく上回り、価格もそれらを大きく超越しています。これは強力な上昇相場を示唆する反面、乖離修正の可能性も示唆します。今後、5日線(現在37,500円前後)がサポートとして機能するか注目され、これを割り込むと調整局面入りのシグナルとなり得ます。上値目処としてはバブル期高値38,915円が強烈な節目として意識され、達成感からの売りも出やすいでしょう。中期的には上昇チャネルを維持しつつも、スピード調整を挟みながらトレンドが継続するイメージです。
長期(月足、週足)
- ドル円(USD/JPY): 週足・月足で見ると、超長期的なドル高円安トレンドがなお継続中です。月足では2020年以降の上昇トレンドライン上に位置し、昨年10月に付けた高値(151円台)からの調整後、再び高値圏に接近しています。MACD(月足)はシグナル線との差が縮小しつつもプラス圏を維持しており、長期上昇モメンタムは生きています。ストキャスティクス(週足)は昨年の急騰急落局面で大きく振幅しましたが、足元では中立圏から上方向へカーブしており、長期の買い余力が徐々に戻ってきた印象です。1990年前後から続く長期レンジ(約75~160円)の上限圏にあるため、150円台では過去にも何度か天井をつけた価格帯です。これを明確にブレイクすれば1990年以来の円安新局面となる可能性があります。一方で、週足の一目均衡表では基準線(143円付近)がサポートとして機能するか注視されます。長期的に見ると、仮に米国景気が減速しFRBが本格利下げに転じればドル安円高トレンドへ大きく転換するリスクもあるため、慎重なフォローが必要でしょう。
- ユーロドル(EUR/USD): 長期視点では、ユーロドルはゆるやかな反発基調にあります。パンデミック後に1.23ドル近辺まで上昇した後、昨年パリティ(1.00)割れまで急落しましたが、今年に入りその半値戻しを達成しています。月足MACDは依然マイナス圏ながらシグナルとの乖離を詰めており、下落モメンタムの弱化がうかがえます。週足RSIも50を超えて強気領域に入り、長期下降トレンドライン(1.20付近)に向け緩やかな上昇トレンドが出現しつつあります。長期DMA的に見ると、1年移動平均(約1.08)と5年移動平均(約1.12)はまだデッドクロス状態ですが差は縮小しており、今後数ヶ月で黄金クロスする可能性もあります。ユーロ圏の経常黒字復調やエネルギー価格安定もユーロの長期下支え材料です。ただし、足元ではウクライナ情勢や欧州経済の構造問題(例:高インフレと賃金のミスマッチ)など下押しリスクも残ります。長期レンジとしては、下値は1.00ドル(パリティ)付近が強固な支え、上値は1.20ドル台前半に長期抵抗線が存在します。長期投資家にとっては1.05~1.10のゾーンが仕込み場、1.15~1.20が利益確定候補のゾーンとも考えられ、当面は長期レンジ内で徐々に底値を切り上げる展開が予想されます。
- 日経平均(日経225): 月足・週足で見ると、日経平均は数十年ぶりの高値圏にあり、長期上昇トレンドの最終局面に差し掛かる可能性があります。月足チャートでは、1989年末の史上最高値を起点とする長期下降トレンドラインを既に上抜けており、長期のレジーム転換が確認されています。2013年以降のアベノミクス相場で形成した上昇トレンドもしっかり維持され、2020年のコロナショック安値(16,000円台)から倍以上の水準に達しました。MACD(月足)はプラス圏で推移し、ヒストグラムも拡大傾向にあり、長期的な強気相場が続いていることを示します。週足では2022年高値(36,950円)を明確に突破し、34年ぶりの高値更新となりました。ストキャスティクス(週足)は90超と極端な買われ過ぎですが、バブル後の未踏領域に突入しておりテクニカル指標も参考になりにくい局面です。むしろ長期投資家のセンチメントやファンダメンタルズが価格を動かしており、PBR改革や安定配当など構造要因が下支えとなっています。とはいえ、過去の経験から長期的に見て年初来+20%以上の上昇を記録した年は秋口に調整する例もあるため、長期トレンドがこのまま一本調子で上昇し続けるかは不透明です。1980年代のバブル高値(約38,900円)を終値ベースで超えるかどうかは、日本市場の長期強気・弱気を占う歴史的なポイントとなるでしょう。長期的には、仮にこれを突破すれば「失われた30年」の完全な終結を意味し、新たな上昇ステージに入る可能性があります。その際は日経平均40,000円台も夢ではありません。一方で達成感からの大規模調整には警戒が必要で、週足の26週線(現状35,000円付近)から大きく乖離した場合はいずれ均衡へ回帰する動きが想定されます。
センチメント/投機筋ポジション動向
投機筋ポジション(IMM) – シカゴIMM通貨先物における投機筋のポジションから、直近の市場センチメントを読み取ります。最新(4月末時点)のデータでは、円のネットロング(買い越し)が約17.9万枚と4週連続で過去最大を更新していました。これは投機筋が米景気悪化や金融不安に備えて円買いポジションを大きく積み増していたことを意味します。しかし5月に入り、米銀行セクター不安の後退や米中協議進展でそうした極端な円ロングは一部解消され始めています(実際、5月2日時点では円買い越し枚数がわずかながら減少に転じました)。同様にユーロのネットロングも7.6万枚程度まで増えており、ドル安・リスク回避方向に市場が傾いていたことが伺えます。これらの偏ったポジションは、今回のような環境変化で巻き戻しが生じやすく、週明けの急激な円安・ドル高にはポジション調整のフローも一役買ったと考えられます。IMMでは他にポンドも小幅なネットロング、豪ドルはネットショートが縮小傾向でした。これは年初から続いた「ドル高是正」の動きが春先まで投機筋に共有されていた裏返しで、市場のコンセンサスがややドル安・景気悲観に偏っていたといえます。今回、そのセンチメントに修正が入ったことで、今後数週のIMMポジション報告では円買い越しの大幅減少やユーロ買い越し縮小が確認される可能性が高いでしょう。
リスク指標(VIX等) – 投資家の恐怖感を示すVIX指数(米株のボラティリティ指数)は、4月上旬に一時60近くまで急騰していましたが、その後急低下し現在は20を下回る水準です。これは市場の極度の警戒感が和らいだことを示しており、実際VIXの低下=株高・円安の関係がこの数日も如実に現れました。VIX以外にも、米ハイイールド社債スプレッドの縮小や、SAFEヘイブンである米国債への資金流出(利回り上昇)も確認され、リスクオン優勢の状況です。もっとも、VIXが20以下に落ち着くのは平時の状態と言え、逆に市場が楽観に傾きすぎている兆候とも取れます。過去の例ではVIX極低下後に突発的リスクで急騰する場面もあるため、地政学リスクや金融システム不安など尾形リスクの再燃には注意が必要です。さらにクレジット市場では、米地域銀行問題で一時拡大したCDSスプレッドも沈静化しましたが、FRBの金融引き締め長期化への懸念が再浮上すれば再度広がる恐れもあります。総じて足元のリスク指標は安定していますが、過信は禁物と言えるでしょう。
市場センチメントの全般 – 通貨ヒートマップをみると、5月第2週はリスク選好通貨が強く、安全通貨が弱い構図が鮮明です。例えば5月8日~12日の対ドル騰落率を見ると、カナダドルや豪ドルが上位に位置し、円とスイスフランが下位でした。対円の通貨強弱でも、ポンド・豪ドル・加ドルが円に対し週初から2~3%高い一方、スイスフランは円に対しても弱含みです。このヒートマップは、米中協議の進展や各国株高という「リスクオンの色合い」を帯びています。通貨強弱チャートでは、前週まで一貫してトップだった円が急落し、代わって商品通貨のラインが上昇に転じました。これはセンチメントの転換点を示唆するもので、投資マインドが防御から攻勢に変わったことを物語ります。ただし、為替市場ではセンチメントの振れ幅が大きくなると、当局による口先介入など思わぬ変数が出ることもあります(実際、5月12日の円急落局面では財務省高官が「市場を注視」とコメントする場面がありました)。また、IMMポジションで触れたように市場参加者のポジションが依然片側に寄っている部分も残存しており、それが解消しきるまでは変動が増幅されやすい点に留意です。
株式市場のセンチメントでは、投資家の強気・弱気マインドを測るAAII個人投資家センチメント調査で、強気比率が直近で50%台に上昇し弱気比率が30%割れまで低下しました。これは昨年末とは対照的に強気派が優勢になっていることを示します。ただしコントラリアン的には強気偏重は短期天井を警戒するサインともなり得ます。恐怖と欲望指数(CNN MoneyのFear & Greed Index)も70(Greed=強欲)近辺へ上昇しており、やや楽観に傾斜しています。一方で出来高などを見ると、米株市場では急騰時にも出来高が平時並みで、フロー主導と言うよりポジション調整主導の上昇との見方もあり、全面的な強気相場入りかどうかは判断が分かれます。日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)は20を割り込み、投資家心理が安定していることを示します。ただ日本市場特有の事情として、海外勢の買い戻しが相場を押し上げているため、これが一巡した際の反動には備える必要があります。
今後の注目点 – センチメント面で注目すべきは、米債務上限問題や主要中央銀行の動向です。仮に米議会で債務上限引き上げ交渉が難航すると、リスク回避で再び円買い・株安に振れる可能性があります。また、5月下旬~6月にかけてのFOMCやECB理事会でサプライズがあれば市場心理が大きく変動し得ます。現在の投機筋ポジションや恐怖指数の水準から見て、市場はある程度の楽観を織り込んでいますが、逆に言えばネガティブなショックに脆弱な面もあります。センチメント指標と実需の動向(例えば各国の購買担当者景気指数PMIや企業決算の内容)にズレが生じていないか、引き続き注意深く見守る必要があるでしょう。
本日の注目イベントと戦略
経済指標・要人発言・テクニカル水準(5月14日)
- 米4月卸売物価指数(PPI)発表(日本時間14日21:30): 前年比+2%前後への減速が予想されています。昨日のCPIに続きインフレ鈍化が確認されれば、FRBの利上げ停止観測が一段と強まりドルに弱材料、株式には好材料となり得ます。予想を上回る場合は逆に米債利回り上昇・ドル高の反応が想定されます。
- 米5月NY連銀製造業景況指数(21:30): 景気先行指標として注目度は中程度ですが、大幅な改善や悪化があれば株価指数先物や為替が一時的に反応する可能性があります。
- 要人発言: 本日は主要中銀当局者の発言予定は多くありませんが、米財務長官や議会指導者による債務上限交渉に関するコメントが断片的に報じられる可能性があります。市場は債務上限問題に神経質なため、「進展」や「難航」といったキーワードに敏感に反応しうる点に注意です。
- 主要テクニカル水準: ドル円は148.50円近辺が直近高値のレジスタンス、上抜ければ150円試しの可能性。下値は147.00円前後がサポート支持帯です。ユーロドルは1.1200ドルにオプションバリア観測があり上値抵抗、下値は1.1070ドル付近がサポート。日経平均は心理的節目38,500円が上値メド、下値は38,000円(昨日終値)と37,500円(5日線付近)が支持ラインです。米S&P500は4,200ptが上値抵抗、下値は25日線のある4,100ptがサポートとして意識されます。
株式:注目セクターや地合いの見通し
- 地合い: 本日も堅調な地合いが見込まれます。米株先物は東京時間早朝時点で小幅続伸しており(ナスダック先物+0.3%程度)、リスクオンの流れが継続しそうです。日経平均は高値圏で迎えますが、米株高と円安が支援材料であり、大崩れする兆候は今のところ限定的です。但し、高値警戒感から上昇ピッチは鈍化する可能性があります。東証プライム市場の騰落レシオやRSIが高水準にあるため、利益確定売りと押し目買いが交錯し狭いレンジでの揉み合いも想定されます。昨日まで4日続伸していたため、「5月に売れ(セル・イン・メイ)」の相場格言を意識した売りも一部出るかもしれませんが、足元の材料が好転しているため過度な弱気は禁物でしょう。日中は米PPI待ちで方向感に欠ける場面も考えられます。
- 注目セクター:
- 輸出関連(自動車・機械): 円相場が148円前後と約半年ぶりの円安水準にあり、自動車株(トヨタやホンダなど)や精密機械(キーエンス、ファナック等)には追い風です。本日もこれら主力株が指数を下支えする展開が見込まれます。特に自動車は米国販売台数の底堅さも伝わっており、業績上方修正期待が再燃しています。
- ハイテク・半導体: 米長期金利低下を受けて、NASDAQ系グロース株に見直し買いが入る可能性があります。東京市場でもソフトバンクGやエレクトロニクス株(東京エレクトロン等)に注目です。人工知能(AI)ブーム関連でエヌビディアや半導体関連は世界的に物色が続いており、日本のレーザーテックなども引き続き物色対象でしょう。ただしナスダック総合は昨夜続落しており、短期的な調整局面にもあります。テック株は高安まちまちで値動きが荒い可能性があるため、上昇しても指数寄与度は限定的かもしれません。
- 金融(銀行・保険): 米地銀株不安が後退したことで、日本の銀行株も先週からリバウンド傾向です。本日もメガバンク中心に堅調な推移が期待されます。特に米金利が高止まりすれば利ザヤ拡大期待から銀行株買いが入りやすいでしょう。また保険株も米債利回り上昇メリットを享受できるため物色が続く見通しです。
- 資源・商社: 原油高を背景にエネルギー関連(INPEX等)や商社株(伊藤忠など)が底堅い動きです。もっとも原油先物は80ドル台半ばまで戻したあと、ここから上値を追うには中国経済指標など新材料が必要なため、本日は小動きかもしれません。一方で金価格急落は住友商事など金鉱開発を手掛ける企業にマイナス材料ですが、影響は限定的でしょう。
- 内需ディフェンシブ: 昨日は建設や不動産が利上げ観測で売られましたが、本日は過度な心配は後退しそうです。逆に水産・農林など昨日売られたセクターに押し目買いが入る可能性があります。またインバウンド関連(百貨店や鉄道)では、中国の“五一”連休(5月初旬)の訪日客増など追い風が吹いており、旅行・レジャー株も引き続き注目です。
- 市場の強弱感: 「強気継続 vs 過熱警戒」の綱引きとなりそうです。前述の通り、センチメント指標は強気に傾いており、追随買いが期待できます。しかし、日経平均は史上最高値を視野に入れていることから利益確定売りも出やすく、上値追いは慎重になる局面とも言えます。東証プライム騰落銘柄比(昨日は値上がり76%)の高さから見て、そろそろ短期的な調整がヘルシーに感じられる水準です。従って、本日は朝方高く引け後は伸び悩む展開(高値警戒のもみ合い)を基本シナリオとします。ただ一方で、欧米機関投資家の間では「日本株に対する戦略的見直し買い」の動きも報じられており(低PBR問題への対応などを評価)、中期トレンドは依然強気です。総じて押し目買い優勢の地合いであるため、多少の利益確定売りは吸収され、底堅い展開が予想されます。
為替:短期的な売買戦略
- ドル円(USD/JPY):押し目買い基調だが148円台の攻防に注目。 前日の急騰後もドル円は高値圏を維持しており、本日は押し目買い戦略が有効とみられます。まずサポートとなる147.00~147.50円ゾーンで下げ渋れば、そこは買いエントリーの好機です。目標は直近高値の148.50円超えを狙い、利食いは149円手前(148.8円付近)に設定します。ストップロスは146.80円割れ(直近押し安値割れ)に置き、リスクリワードを確保します。仮にNYタイムに向け148.50円を明確ブレイクした場合、ブレイクアウトについて行く買いも一案です。その際は150.00円のオプションバリア付近で利益確定を検討しつつ、149円割れにストップをタイトに置く戦略が考えられます。一方、ドル円の上昇が一服し147円台で伸び悩む場合、短期的な逆張りの売りも検討できます。148円付近で上値が重いと判断できれば、147.80円あたりで打診売りし、147.00円近辺を利食い目標、148.50円超をストップ(損切り)とします。ただ基本トレンドは上向きのため逆張りは小さく取り、順張り押し目買いをメインとする方が得策でしょう。エントリーは1分足チャートなど超短期のプライスアクションで下げ止まりを確認してから行い、飛び乗りは避けます。東京時間は実需のフローで比較的穏やかですが、ロンドン以降に動意づくことを想定し、主要な指標発表前後ではポジション調整を怠らないよう注意します。
- ユーロドル(EUR/USD):レンジ上限ブレイク待ちの戦略。 ユーロドルは目先1.11台後半のレジスタンスを試す展開です。基本戦略はブレイク待ちからの順張り買いです。具体的には1.1200ドルの節目を1時間足の実体ベースで明確に超えた場合、そこから押し戻される可能性はあるものの、追随買いエントリーを検討します。エントリーポイントは1.1210ドル付近(ブレイク確認後の戻り)、利食い目標は次のターゲット1.1300ドル近辺に設定します。ストップロスは再度1.1180ドルを下回ったところ(騙しブレイク判定)に置きます。一方、上値ブレイク失敗で再度1.11を割れてくるなら、レンジ逆張りとして1.1080ドルあたりで短期売りエントリーし、1.1020ドル(直近安値圏)を利食い目処、1.1150ドル上抜けで損切りとします。ただトレンドは上向きですので、売りは小さく・利食い浅めに心掛けます。押し目買い派は、1.1070-80ドルにかけてサポートが厚いので、そのゾーンへの下押し時に分散で買い拾う戦略も有効です。その際のターゲットは再度1.1150-1.1180ドル、ストップは1.1040ドル割れとします。経済指標では今夜の米PPIでドルが大きく動く可能性があり、結果が予想を下回ればドル安=ユーロ高が加速しやすいため、ロングは指標前に仕込んでおく手もあります(ただしリスクを取れる場合のみ)。エントリー時は5分足・1分足で出来高の増加やローソク足の実体拡大などブレイクサインを確認し、だましに警戒します。
- ポンドドル(GBP/USD):高値追いは慎重に押し目狙い。 ポンドドルは1.33ドル近辺と昨年来の高値圏にあります。さらなる上昇には英指標など新材料が必要とみられるため、本日は押し目待ちの買い戦略が良さそうです。目安として1.3200~1.3220ドル付近(前日の安値圏)まで調整したら、そこで買いエントリーします。利食い目標は直近高値圏の1.3300-1.3320ドル、損切りは1.3170ドル割れ(短期サポート下抜け)とします。仮に市場全体がリスクオフに傾きドル買い・ポンド売りが進む場合には、深追いは禁物です。逆に、1.3340ドル(年初来高値更新ポイント)を上抜く動きがあれば、ユーロドル同様に順張りの買い増しを検討しても良いでしょう。その際の第一目標はキリ番の1.3400ドル、次いで昨年高値付近の1.3500ドルが射程に入ります。ストップはブレイクポイントの少し下(1.3320ドルあたり)に置き、騙しに備えます。クロス円で見るとポンド円も上昇傾向にありますが、そちらはやや過熱気味ですのでポンドドルでドル安メリットを享受するほうがリスク管理しやすいでしょう。短期売買では英10年債利回りやユーロポンドの動きも参考に、総合的にポンドの強弱を判断します。
- クロス円(CAD/JPY・AUD/JPYなど):利食い優先と押し目拾い。 リスクオン相場で大きく上昇したクロス円通貨は、一部で反落の兆しもあるため慎重な対応が必要です。たとえばカナダドル円(CAD/JPY)は112円台後半~113円台で年初来高値圏にあります。既にロングポジションを保有して含み益が出ている場合、段階的な利食いを検討すべき水準です。113円台前半・後半に売り指値を分散配置し、欲張らず利益確定する戦略が賢明でしょう。新規エントリーについては、111円台まで調整してくる場面があれば押し目買いを検討します(原油価格と株価指数を睨みつつ)。エントリーレート111.50円前後、利食い112.50円、ストップ111.00円割れといった具合です。豪ドル円(AUD/JPY)も同様で、95円台後半が年初来高値圏なので、96円手前では一部利益確定し、94円台への押し目を拾う戦略に切り替えます。コモディティ相場や中国株動向が豪ドル円には影響するため、それらが軟調なときはエントリーを見送る柔軟さも必要です。総じてクロス円通貨はトレンドが強いので下がったところは買われやすい半面、短期的な利益確定売りも出やすい段階です。売買戦略としては「利乗せ分は伸ばしつつも、新規追随は慎重に」が基本スタンスとなります。
- 金(GOLD):戻り売り目線で短期勝負。 金は週明けに大きく下落した後、短期的な戻りを試しています。しかしリスクオンが続く限り上値は重いとみて、戻り売り戦略が有利かもしれません。具体的にはスポット価格で2,000ドル(=先物約3220ドル)付近が戻りの目処ですので、その近辺に引き付けて売りエントリーを検討します。エントリー$2,000、目標$1,960、ストップ$2,020といった設定です。逆にリスクオフに転じた場合は急騰の可能性もあるため、売りポジションは浅めの利確を心掛けます。押し目買い視点では、1,940ドル台(週明け安値圏)でダブルボトムを形成するか注視し、その場合は短期リバウンド狙いの買いも考えられます。ただ、主要なサポート割れでテクニカル的に売りが出やすい地合いですので、慎重なエントリーが求められます。超短期取引では1分足チャートでローソク足のヒゲの長さや出来高急増を確認し、エントリーポイントの精度を高めることが肝要です。ボラティリティが大きいためポジションサイズは控えめにし、逆行時の損切りは迅速に行います。
総合戦略: 本日は全般にリスクオン継続シナリオで臨みますが、主要指標発表前後は値動きが荒くなる可能性が高いためポジション調整をしつつ挑む方針です。為替は基本的に順張り(トレンドフォロー)の押し目・戻り狙いとし、株式指数やクロス円もトレンドに逆らわない取引を心掛けます。エントリー前には必ず1分足ないしティックチャートでモメンタム確認(出来高や直近高安ブレイク)を行い、ダマシに警戒します。ファンダメンタルズ要因にも留意し、万一米PPIなどで流れが変わればシナリオをすみやかに修正します。利食い千人力の精神で、利益が乗ったポジションは段階的に利益確定し、欲張り過ぎないことも短期戦略のポイントです。
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